清少納言

「枕草子」

<原文>
野分のまたの日こそ、いみじうあはれに、をかしけれ。
立蔀(たてじとみ)・透垣(すいがい)などの乱れたるに、前栽どもいと心苦しげなり。大きなる木どもも倒れ、枝など吹き折られたるが、萩・をみなへしなどの上に、横ろばひ伏せる、いと思はずなり。格子の壷などに、木の葉をことさらにしたらむやうに、こまごまと吹き入れたるこそ、荒かりつる風のしわざとおぼえね。

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<現代語訳>
台風の次の日は、たいそうしみじみとしていて、趣深く感じられる。
板塀やかきねなどが(前日のかぜのために)乱れていて、庭に植えた草木などもたいそう心苦しげである。大きな木なども倒れ、枝などが吹き折られてしまっているのが、萩やおみなえしなどの(木に比べて小さな草の)上に、横倒しになっているのが、とても予想外なことである。格子戸の一こま一こまの目に、木の葉をわざとしたように、こまごまと吹き入れているのは、荒かった風のしわざとはとても思えない。

横井の総評

清少納言は、日常や宮廷での生活を随筆として著しました。
彼女の繊細さが台風の次の日の季節感を見事にとらえているところに感動があります。